ブルーリンク開発Story
- そもそも大実の
切削加工技術は
1962年の創業以来、ご縁を頂いた多くのクライアントの皆さまに鍛えて頂けた、といっても過言ではありません。
どう加工すれば良い製品ができるのか悩みつつ、工夫に工夫を重ねて加工方法を見出したり、どうすれば短納期で納入できるのか?など、ひとつひとつ解決してきたことが私たちの加工技術の基礎です。
実は、以前から自社の加工技術を活かして、「大実製作所のオリジナル商品を作りたい」という想いは心の中に抱き続けていたのです。
しかし、「オリジナル」への道は険しく、なかなか実現できずにジレンマを感じていました。
今思えば、自分で限界を設定してしまったのではないかと反省しています。ただ、大実製作所の生産環境と加工技術さえあれば、必ず実現できるとだけは心の中で思い続けていました。
- 求められる
パーティションの
価値観が…
2020年3月以降、マスクは必携アイテムに、ひと足遅れてさらに飛沫飛散防止の目的でアクリルのパーティションも注目されるように。
弊社でも後発ながら、商社経由で行政からのパーティション製作の業務に追われている時のこと。「とにかく早く」「安く」といった切実なご要望の一方で、「設置環境にあうデザインで」「格好良いものが欲しい」etc.見た目も気にされる声が実に多かったのです。
確かに機能は非常に大切です。しかし、必要に迫られたパーティション設置によって、無意識にその空間の雰囲気を崩してしまうケースもありました。だから、直接ではなくても樹脂加工業界の一翼を担うものとして責任を感じていましたし、ユーザーからデザインを気にする声が聞こえてくるのも頷けます。確かに見た目は重要な要素ですからね。
「これだ!今のご時世、機能性に加えて、すっと空間に溶け込む様なデザイン性も兼ね備えたパーティションであれば、お役に立てる!」と、この時に強く感じたのです。
- プロダクトデザイナーとのご縁
商品開発にあたっては、20年来のお取引のある企業GKデザイングループにご相談。工業デザイン・プロダクトデザイン、環境・情報デザイン、デザインエンジニアリングなど、領域を超えて多くの実績を残されている総合デザインカンパニーです。
そんな高い専門性をもった企業の皆さまに、私大屋が余すところなくお伝えした想い全てに共感して下さり、「グループをあげて協力いたします」と、心強いお言葉をいただきました。
後日、GKデザイングループでの具体的な開発構想をデザイン担当の猪狩氏から伺い、商品が担うべき役割や、全てにおける多角的で細やかな配慮に感動を覚えたのは言うまでもありません。こうして、今の私たちにとっての最適なパートナーグループと共に、本パーティションプロジェクトがスタートしたのでした。
----(編集者:K)
今回のプロジェクトが始まった時、どんなお気持ちでしたか?
猪狩氏)
デザインを担当することになって、いやぁ、身が引き締まる思いでしたね。大実製作所さんにとって、初のオリジナル商品の開発ですし、しかもそれは社会からも必要とされているアイテムです。そういう意味で責任感を感じ、背筋がピンっと延びました。
でも、仕事を通じて社会に貢献できるチャンスを頂けた期待感の方が大きかったかもしれません。
----(編集者:K)
デザインをするうえで、どんなことを考えましたか?
猪狩氏)
私も、大屋専務と同様、既存の商品にはかなりの「改善の余地がある」と感じ始めていました。感染症対策の暫定措置として仕方ない部分もありますが、昨今の状況が続いてしまうと、色々な配慮が必要になってきますからね。つまり、当初、パーティションに必要とされた機能性を超えて、新たな役割を担うステージに突入したということでしょうか。
デザインにあたっては、単に見た目に関するソリューションだけでなく、パーティションの「使い方」や「作り方」さらには「あり方」などにも視野ををひろげ、副次的にほかの事までも解決できる考え方でデザインと向き合いたい、と考えていました。
言わば、ユーザーと生産者、さらには副次的に他者にも良い関係性を創造できるような考え方です。
----(編集者:K)
商品化を進める中でエピソードを紹介してください!
猪狩氏)
Lタイプの脚部。塊の様に見えて、実はアクリルの薄板を一枚一枚重ねて接着してブロック化しています。このブロックは「激寒の湖に浮かぶ氷」をイメージしていまして、人工的に作られた綺麗で透明な氷というよりも、気泡混じりの自然なテイストを求めている訳です。
「無造作に気泡がたくさんあると良いのですが…」とお願いしたものの、上がってきたサンプルは純度の高い氷の様で、想定よりも遥かに綺麗で透明なアクリルブロック。ポイントであるはずの気泡も少なくて、かなり遠慮がちでした。
理由を伺ったところ、それもそのはず。「気泡=不良品」として扱われるのが業界の不文律のため、職人さんの立場になれば、気泡が入らない様に作業しますよね。
もちろん、今では、湖の氷の様に気泡の入ったアクリルブロックも自在に作り出せることから、大実製作所さんの加工品質や技術対応力の高さが伺えますが、品質に対する価値観と言いましょうか……、品物によって意識を分けて頂けるようにお願いしたことが印象に残っています。
----(編集者:K)
廃プラマネジメントとはどういうことでしょうか?
猪狩氏)
昨今、「プラスチックの海洋ごみ」のニュースを目にすることが多くなりました。こうした世界的な問題に対しても、本プロジェクトを通じて環境デザインといった側面から何らかのアプローチができればと考えていたところに、大屋専務の雑談を思い出したのです。
それは、毎回、打合せの度に伺ったトマトの露地栽培のお話。
その当時は、レンタル農園で栽培されていたそうですが、いずれは筑西工場の一画に福利厚生の一環で農地を整備する話が持ち上がっているとか……。(笑)
「プラスチックと農業、この二つを結び付けたらどうだろう?」と、最初は単純な発想でしたが、既に大屋専務も心のどこかにあったようですね。
大屋氏)
はい。調査は始めていました。ですから、その後間もなく、アクリルの廃材は蒸気や温水に変換し、ハウス栽培の熱源として再利用する試みが始まったのです。
何れはアクリルに限らず、樹脂加工業界全体に廃材リサイクルの考え方が拡がり、それぞれの方法で取組んで頂けるキッカケになれば良いと思っています。また、さらにその先には樹脂加工業界と農業従事者が手を携えて、各地で再利用・リサイクルの動きが多くなると良いのですが。
本プロジェクトでは「作る」だけに留まらず、その後の「再利用」を視野に入れたモデルケースになることを想定している、ということでしょうか。
- 今後の大実製作所にご期待ください!
これまではクライアントからの図面を忠実に再現するモノづくりでした。しかし、今回、様々な立場に立って自ら考えて進める経験はワクワクの連続で、今までにない新たな視点での貴重なモノづくり体験は私たちの財産です。
また、開発に携わった弊社のメンバーも、誰かの役に立つ仕事のやりがいを感じてくれたことでしょう。
次世代に向けて、まだまだ一歩目のチャレンジに過ぎませんが、チャレンジすることで得られる達成感が自己成長に繋がると信じて、これからも歩み続けて参ります。
今後の大実製作所に、どうかご期待ください。
そして、今まで以上にご指導いただけましたら幸いです。